株式会社トンボ楽器製作所


★このページは『TOMBO祭2024』のコンテンツであり、2024年11月24日時点の情報となります。
インターネットメディアの可能性
紫吹まゆ(ハーモニカVTuber)
はらよし:
TFC-On-Lineの担当ならびにTOMBO祭の実行委員長の“はらよし”と申します。
この度は『トンボ楽器製作所』エリア、ピックアッププレイヤーのインタビューにご協力いただきありがとうございます。
VRを始めとするバーチャル世界のテクノロジーは日進月歩で進化を続けていますが、そんな最新のテクノロジーとハーモニカというアナログ楽器をリンクさせ、活躍の場を広げているハーモニカVTuberの紫吹まゆさんに、今回は色々と質問をさせていただきたいと思います。
もちろんVTuberというお立場上、答えられる範囲で結構です。
それではまず簡単に自己紹介をお願い致します。
紫吹:

初めまして、ハーモニカVtuberの紫吹まゆ(しぶきまゆ)と申します。
紫吹は、VTuber活動を通して、
「クロマチックハーモニカ」を一人でも多くの人に知ってもらいたいです。
普段は J-popとアニソンなど身近な曲のカバー演奏を中心に、
YouTubeなどさまざまなプラットフォームで配信や動画投稿をしております!

普段の配信
また、クロマチックハーモニカの可能性を探るオリジナル曲も公開しております。
その他、雑誌やラジオ出演、メタバース空間内の演奏イベント、3Dライブイベント、リアルライブにも積極的に取り組んでおります!

3Dライブイベント

リアルイベント
本日は何卒宜しくお願い致します。
はらよし:
ありがとうございます。
ところで、VRとはヴァーチャル・リアリティのことですが馴染みのない方も多いかと思います。
VRやVTuberについて、またその世界の魅力について簡単にご説明いただけますでしょうか。
紫吹:
そうですね! VTuber、VR、メタバースの概念はよく混同されがちですが、それぞれ異なるものですのでご説明いたします。
VTuberとは「バーチャルYouTuber」の略称で、アバターを使ってYouTubeで活動する人たちのことを指します。ネット上で活動する架空のキャラクターであり、単なるアバターではなく、それぞれのキャラクターにストーリーがあり、独自の世界観を演出します。
私、紫吹まゆもまた異世界出身の錬金術師です。紫吹まゆの持つ中世ファンタジー風の世界観には、ハーモニカやアコーディオンの音色が非常にマッチします。音楽を通じて、皆さんにこの世界観を楽しんでいただければ幸いです♪
歌とハーモニカのオリジナル楽曲↓
おそらく、はらよしさんが勘違いしている概念はVRですね。
VR(ヴァーチャル・リアリティ)とは、仮想現実を意味し、VRゴーグルを装着して架空の体験をする技術です。ゴーグル型のディスプレイを顔に装着することで、立体的な映像を出力し、顔の向きや傾き、位置に合わせて映像が制御されます。これにより、まるで自分がもう一つ現実の中に入り込んだかのような感覚を得ることができます。
メタバースとは、仮想空間のことで、VRとは異なり、仮想「現実」ではなく仮想「空間」を指します。例えば、VRを介さないMMORPGオンラインゲーム(※注:インターネットを介して数百人~数千人規模のプレイヤーが同時に参加できるオンラインゲームのこと。)もメタバースの一種です。メタバースでは、ユーザーが仮想空間内で相互に作用し合うことが重要です。
「VTuber」「VR」「メタバース」は全く異なる概念です。VTuberはYouTube上で活動するバーチャルな存在であり、そのほとんどはVR技術もメタバース空間も使いません。ただし、一部のVTuberはメタバース空間で活動したり、VR技術を通じて現実世界の人々と交流することもあります。
私、紫吹まゆもメタバース空間内で演奏イベントを行うこともありますが、全体の活動の極一部に過ぎません。多くのVTuberはその名の通りYouTubeを主な活動の場としています。

メタバースプラットフォーム「cluster」内での演奏イベント
演者自身だけでなく、観客も同じ空間で一緒に盛り上がることができます。


はらよし:
なるほど、私はメタバースやVTuberもVRという大きなくくりの中の一つ、という認識でいたようです。
VRとは専用のゴーグルを使用する体験をさし、メタバースは必ずしもVRゴーグルを必要としない仮想の空間を意味し、VTuberはアバターを使用したYouTuberのことで、VRもメタバースも関係なく活動が可能、ということなんですね。
大変勉強になりました。
ひとことでバーチャルと言っても色々あるんですね。
紫吹さんは『クロマチックハーモニカを広めたい』とPRにも明記されていますが、ご自身の演奏やオリジナル曲を聴いて欲しい、といった宣伝とは別に、このような心情をあえて表明している理由をお聞かせください。
紫吹:
そうですね。
結論から申し上げますと「ハーモニカの魅力を届けたい」から「オリジナル曲も制作」していたり、「配信活動」をしているのです。
「クロマチックハーモニカを広めたい」という思い自体が、Vtuberとして活動する「生き甲斐」ですね。極端な話、むしろ私自身の演奏やパフォーマンスはどうでも良いと思っています(笑)。
私はVTuber活動で生計を立てるわけではなく、ハーモニカ愛好者の一人として、趣味での活動になるので、「この楽器はこんなに素敵なのに、知られていないのはもったいない!」と感じています。特に、音楽がまったくわからない私でも、たくさんたくさん音楽を奏でるようになったので、音楽に憧れを持っているが、楽器の敷居が高いと思っている人たちに届けたいです。
活動を始めた最初の1週間頃は確かに、「演奏を聞いてくれる人がいればいいな」と思うぐらいでしたが、聞いてくれたリスナーさんがハーモニカの音色に驚いてくれたり、ハーモニカのことについて質問されたり、ハーモニカの話を語ったりする時間がVTuberとして生き甲斐となりました。
紫吹は決して音楽の才能はありませんでした。だからこそ、音楽と向き合う勇気をくれたハーモニカが大好きです。しかし、教育の場で接触する機会が減り、どうしても若い方には「おもちゃ」のイメージが強く、積極的に触りたい楽器じゃないと感じました。
特に活動を始めたのは2020年、新型コロナウイルスが流行り出した頃で、ハーモニカのコミュニティ・イベントは活動できなくなっていることが多かったです。やはり息を使うハーモニカはマスク時代との相性が悪く、このままハーモニカの廃盤が増えるんじゃないか、時代に置き去りにされるんじゃないか、と心配していました。「そうならないといいな...」「そうならないように少しでもできることをしたい」という思いで活動しております。
はらよし:
活動の目的はクロマチックハーモニカを広めることで、VTuber活動で生計を立てることではない、ということなんですね、納得です。
配信を見ていてもその部分を大切にされているな、と感じます。
紫吹さんはハーモニカ以外の楽器経験がないと、前回のTOMBO祭のプロフィールで回答いただきました。
楽器を始めるにはきっかけがあると思いますが、やってみようと思った経緯などお聞かせください。
紫吹:
ハーモニカを始めたきっかけについてですが、恥ずかしながら、「ハーモニカなら簡単そうで、自分でもできそうだ」と思ったからです。音楽にはずっと憧れがありましたが、他の楽器は難しそうで、なかなか手を出せませんでした。体験しても音をうまく出せなかったり、運指が難しかったりすることが多くて挫折してしまいました。
そんなとき、ふとしたきっかけでハーモニカに触る機会があり、すぐに簡単な曲を吹けるようになったこともあり、「これなら自分でもできるかもしれない」と思ったのが始まりです。実際に演奏を始めてみると、思った以上に奥深く、魅力的な楽器であることに気づきました。そして、演奏を通じて、ハーモニカの美しい音色をもっと多くの人に届けたいという思いが強くなりました。
はらよし:
簡単そう、自分でもできそう、というイメージはハーモニカにとって悪いことではないと思いますし、むしろチャレンジへのハードルを下げるのでよいのではと思います。
手軽に始められるけど極めようと思えば奥が深く、長く楽しめる楽器なのでもっと知っていただきたいですね。
楽器演奏系のVTuberはアバター(体としてのイラストもしくは3Dモデル)を介して演奏を行います。
どうしてもリアルの演奏動画と比較すると、アバターでは動きにたどたどたどしさが残ります。もちろんバーチャルを表現する技術は日進月歩ですから、細かい所作もいずれ再現可能になると思います。
紫吹さんはこのアバターによる演奏という表現方法をどのように感じていますか?
また、今後どのように発展していって欲しいと思っていますか?
紫吹:
VTuberは2Dの「動くイラスト」もしくは「3Dモデル」の体で表現することが多いですね、いずれも、現実世界の皆様と完全に動作で演奏することは難しいものの、ハーモニカの演奏自体は大きな動きがないことや音楽活動は音がメインなので、相性がとても良いと思います!
VTuberもテレビアニメのキャラクターと同じように、バーチャルな存在として、完璧に描写されていなくても、行動や感情を表現できれば良いと思います。アニメもまだ動きが「たどたどしい」と言えますが、それが重要なのではなく、ストーリーであったり、キャラクターの個性を伝えることがアニメの魅力だと思います。
VTuberにも同じことが言えるでしょう。
前述のVTuberになり、バーチャルな存在としてのストーリー性や世界観を楽しむことはもちろんですが、最近、個人&企業問わず見られます、現実世界の演奏家やアーティストがアバターを介して活動することも増えましたね。
●要田詩織&柴音フルート
https://www.youtube.com/@shioriflute
こちらはフルート奏者の方ですが、最近バーチャルの存在の分身も同じチャンネルで投稿&配信されています。
●バーチャル後藤真希:ぶいごまチャンネル V後藤真希
https://www.youtube.com/@V_GOTO_MAKI
誰もが知っているあの国民的アイドルの15歳の姿がバーチャルの世界に!
こうしてVTuberとしてではなく、ご自身の分身としてVTuberのような、2Dの「動くイラスト」もしくは「3Dモデル」の体を使用することもおすすめできますね!
ハーモニカ演奏家にとってのメリットは...
- 実際に自分が演奏している姿を見られるのが恥ずかしいという思いをカバーできる
- 演奏をすると必然的に顔周りを映さないといけないが、ネットで顔出しするのが怖い
- 女性の方だと、メイク(特に口紅)と相性がやや悪い楽器なので、そういったところをカバーできる
また再現度についてですが、2Dの「動くイラスト」と「3Dモデル」でも事情が少し異なります。
2Dの「動くイラスト」は動きの自由度は低いですが、主な動きやハーモニカの移動・レバー操作はある程度再現でき、どの瞬間をキャプチャしても「かわいい」「美しい」と思ってもらえるため、ハーモニカへの好感度アップに繋がりやすいと感じます。アニメのキャラクターにも近いこちらの表現が若年層の興味を引くのではないかと思います。現段階でかなり完成度が高いと感じました。
3Dモデルは自由度は高いものの、楽器の動きをきれいに再現することは難しいです。再現方法(トラッキング)は四肢の動きまでしか想定しておらず、指の動きを再現できるものは少数です。そのため、楽器を持っていると体の一部の認識ができなくなったり、空間がずれたりします。一つの方法として、楽器を体の一部として固定する方法が最近の主流となっております。
私自身も3Dモデルでの演奏会をいろいろ模索しています。
ただ、ハーモニカは楽器自体がコンパクトなので、例えばVR技術でメタバース空間内に入る際、VRゴーグルを被った状態でも演奏できるなど、楽器の中でもかなり親和性は高いと思います。
将来的に技術が進歩し、より簡単に高精度で再現できるようになると、3D空間内の演奏もとても楽しみです。これからもネット上で顔出しに抵抗を持っている楽器愛好家の方には、アバターを使った表現を取り入れてほしいですね♪
はらよし:
確かに、ハーモニカは他の楽器に比べて細かい動きを要求されない、というのはあると思います。
また、アバターにはビジュアルの匿名性といいましょうか、そういうメリットもありますね。
口を使用する楽器はどうしても顔を出さざるを得ませんから、気になる方はアバターを使用することも、将来的に普通に選択肢に挙がるようになればいいですね。
3D技術が進化することで2Dとの差異も明確になりますが、どちらも親和性が高いので、この世界はもっと楽しくなりそうです。
『TOMBO祭アワード』のミッションカテゴリーにVR系を作ってみました。
私も個人的に興味がある世界なのですが、まだまだメタバースへの参入には敷居が高いようにも感じます。
まずアバターがカッコよく、かわいく作れないとやる気になりません(笑)。
ただ、今は優れたツールも提供されていたり、アイテムも豊富に販売されていますから、比較的理想に近いアバターを作れそうですね。
紫吹さんのアバターは素人目にもとてもハイレベルに感じ、当初から目を惹くものがありました。
VTuberにとっての、また紫吹さんにとってのアバターとは何でしょうか?
紫吹:
紫吹の姿を褒めてくださってありがとうございます。
VTuber活動とは少し違う内容になりますが、メタバース空間について少し補足いたします。
メタバース空間と言えば高価の機材が必要なイメージがありますが、
実は皆さんがお持ちのスマホ、タブレット、PCから無料でアクセス出来ます♪
ご自身の分身としての3Dモデルのアバターに関しても、メタバース空間のプラットフォーム側がデフォルト機能として、自由に自分のアバターを作成できます。
また無料配布から数千円程度でとてもハイクオリティのものを購入できます。
お好みの姿でメタバースデビューは難しくはないと思います。
VTuberの数も決して数少なくありませんが、VTuberではないメタバース世界の住民の数のほうが圧倒的に多いかもしれませんね。
ただVTuberとして「活動」をすると、収益が発生したり、活動者として権利関係をクリアするために、オリジナルなものを作成する場合がありますので、そちらはたしかに時間も予算もかかりますね。
紫吹は2Dの「動くイラスト」と「3Dモデル」両方の体を持っていますが、
どちらもVTuber紫吹まゆの体であり、紫吹まゆそのものですね。
はらよし:
2Dの「動くイラスト」と「3Dモデル」については先ほど詳しく説明いただきましたが、双方どちらも魅力がありますね。特に2Dの「動くイラスト」は文化的に日本との相性がよく、注目も集まりやすいかもしれません。2Dを動かすアプリ『Live2D』が日本で生まれたことにも納得です。
紫吹さんは既存曲のハーモニカアレンジ以外にオリジナル曲も公開されています、ハーモニカのインストゥルメンタルから、イントロやアウトロ、間奏でハーモニカががっつり入った歌モノ(ボーカルも紫吹さんが担当)やループ用BGMなどもございます。
紫吹さんは楽曲における楽器パートの一つとしてのハーモニカと、歌メロをカバーするハーモニカ、という二つの楽しみ方について、どのような考えをお持ちでしょうか。
紫吹:
紫吹まゆは、現在ハーモニカのインスト曲3曲、歌モノ4曲、BGM(ループあり)2曲バランスよく公開しております!
私自身、ハーモニカが主メロディを担当するインスト曲が好みですが、今回は間奏でハーモニカががっつり入った歌モノ(ボーカルも紫吹さんが担当)について語らせていただきたいです。
VTuberとして活動する中で「VTuberのオリジナル歌」を求める人が一定数います。
私のリスナーさん(ファンの方)が「VTuberオリジナル曲」から「VTuber紫吹まゆの曲」そして「ハーモニカ入りの曲」に出会い、そこからハーモニカに興味を持ってくれる方がかなり多いです。
またVTuber向けのイベントも歌の出演が前提であることが多く、親しみやすさと求められるものに応えるため、歌もののオリジナル曲を出しています。
やはり楽器自体の知名度を上げるには、多くの人が聴いているポップスの歌ものに使われることが大切だと思います。「ハーモニカの曲」よりも、「好きな曲に使われたハーモニカ」や「いつも聴いているあの曲のハーモニカアレンジ」の方が、聴いてみたいと思う人が多いでしょう。
例えば「ハーモニカの曲」のイメージはあまり湧かないかもしれませんが、「いきものがかり」さんや「ゆず」さんの曲の間奏に使われたハーモニカならイメージしやすいですよね。同じように、「歌もの+間奏ハーモニカ」の方が、ハーモニカを知ってもらうためには相性が良いかと思います。ほかのハーモニカ愛好家にはあんまり見られていない動きなので、紫吹まゆ独自な取り組みかもしれませんね。
クロマチックハーモニカは、歌に近い感覚で演奏でき、歌もののメロディをカバーするのに適しており、感情も乗せやすい楽器です。
同時に、間奏に使うなら10ホールズという固定観念も捨てたいです。サックスソロやバイオリンソロのように、いろんな作曲家やアーティストにハーモニカを使ってほしいと思います。
はらよし:
本当に好きなこと、やりたいことと、伝えるために必要なことのバランスをうまく取れるとよい結果が出てきそうですね。
紫吹さんのハーモニカインストゥルメンタルを視聴すると、ゲーム音楽をイメージします。その辺りは意識しているのでしょうか?
また、オリジナルの作曲者さんはハーモニカを演奏される方なのか、フレーズの一部など、紫吹さんも作曲(アドリブ)する箇所があるのかもお聞きしたいですね。
曲が出来上がるまでの過程なんかも、よろしければ教えてください。
紫吹:
紫吹まゆの曲を聴いてゲーム音楽をイメージされるとのことですが、紫吹まゆの世界観が「異世界」、「ゴシック」、「ファンタジー」、「錬金術」といったキーワードで構成されているため、ゲームやアニメ作品によく出てくるキーワードと重なり、そう感じられるのかもしれません。
実際のところ、ファンタジー作品でよく使われるケルト音楽(もしくはケルト風音楽)は、ハーモニカやアコーディオンと非常に相性が良いこともあり、そういった音楽からもインスピレーションを受けています。
また、基本的にあらすじがあって、ストーリー性のあるオリジナル曲にこだわっております。これは、スポーツ&部活動系アニメや漫画作品の影響を受けて、そのスポーツや楽器を始める人も少なくないように、紫吹のストーリーでハーモニカを始める人がいたら嬉しいなという思いもあります。
作曲者についてですが、作曲者さんはハーモニカを演奏したことがなく、クロマチックハーモニカの構造と特徴、得意とすることを伝えて作曲してもらっています。元々はゲーム音楽を作曲している方ですが、最近はボーカロイド音楽を作るボカロPとしても活躍しています。
曲の作り方について説明しますと、まず作曲者さんに私のイメージやテーマ、キーワード、伝えたい思い、参考曲などを伝えます。その後、作曲者さんからいただいたワンコーラスデモを基に、雰囲気や使用楽器、構成(サビの繰り返し)や転調などを相談し、修正しながら仕上げていきます。ハーモニカのフレーズは、作曲者さんがベースを作り、私がアレンジを加えることもありますが、そのままの場合もあります。良くも悪くも、ハーモニカらしくないけど良いフレーズが多いですね。
はらよし:
ありがとうございます。
これからオリジナルに挑戦してみよう、という方にとっても大変参考になったのではないでしょうか。
ハーモニカ演奏が自然に流れてくるくらい、多くの楽曲に使われるようになればいいですね。
現在紫吹さんのYouTubeチャンネル登録者は1.7万人超となっています。ある時を境に一気に伸びた感じがしましたが、どのような要因が考えられますか?
紫吹:
ありがとうございます。
昨年のトンボ祭の頃は、チャンネル登録者数が2000人でしたが、その後月に1000人、多い月では5000人ほど増えました。
現在は落ち着いてきていますが、いくつかの要因がありますね
まず、ひとつ目はYouTubeの「縦型配信」です。スマホ向けのこの配信方法は、画面に入る情報が少ないため、演奏配信など耳で楽しめる内容との相性が良く、おすすめに乗りやすかったです。一回の配信で数百人増えることもあります。
また、ショート動画の投稿に力を入れたことも影響しています。ショート動画は、登録者以外にもおすすめされやすく、新規ユーザーにアプローチしやすい投稿形式だと言われています。
さらに、ここ半年で様々なイベントに出演し、いろんな人の目に止まるように意識したことも影響していると思います。
そのほか、楽器を演奏しているVTuberさんとのつながりを強化し、コラボ(オンラインセッション)や演奏リレーを主催したり、YouTube公式アーティストの承認が降りたり、チャンネルメンバーシップを実装したことも、チャンネルの評価に繋がったのではないかと考えています。
恥ずかしながら、ハーモニカ演奏者としての成長というよりも、VTuberとしての成長かもしれません。しかし、この過程で多くの人にハーモニカを知ってもらい、興味を持ってもらうことができたと思います。
VTuberというアプローチで、より身近な存在として感じてもらえるようにこれからも頑張ります。どうぞよろしくお願いいたします♪
はらよし:
VTuberに限らず、YouTubeチャンネルの登録者数を増やすという意味で、とても参考になるお話をありがとうございます。
今この時、視聴者が集まるコンテンツにアンテナを張っておくのは重要ですね。
そしてコラボも大事ですね。ハーモニカのグループでもアンサンブルをされる方のつながりは強いですし、音楽や楽器がより楽しく感じられる要素があると思います。
コラボはリアルよりもオンラインの方が気軽に声をかけられることもあり、成立しやすいのかもしれません。
このコラボは個々で頑張っているプレイヤー(リアル、オンラインどちらも)も積極的に行っていければ、もっと多くの人にハーモニカの魅力を届けることに繋がるでしょうね。
再生数やチャンネル登録者数などはどうしても気になるところですが、数字を上げた理由を限定することには意味がないと思います。
いろいろな努力や活動の結果、相乗効果もあって全てが繋がっていると感じます。
この数字は紫吹さんの総合的な魅力を示していると思います。
紫吹:
ありがとうございます!
日々、皆様から「ハーモニカってこんな音がだせますね」「クロマチックハーモニカ初めて聞きました」など驚きと肯定の声をいただき幸せです。
はらよし:
紫吹さんはクロマチックハーモニカ以外にも10ホールや複音ハーモニカも持っていらっしゃいます。
ハーモニカの種類が多い、というのは入門者にとって必ずしも親切とは言えませんが、それぞれの目標やスタイルに合うハーモニカがある、と言い換えることも可能です。
そんなちょっとややここしいハーモニカという楽器について、紫吹さんが感じることをお聞かせください。
紫吹:
私自身、10ホールズや複音ハーモニカを所持していますが、配列が複雑で、理論上でしか理解できない状態です。特に10ホールズに関しては、移動ドの考え方に親しみがなくて、私自身難しい楽器だと感じています。最初に触った楽器や音楽知識によっては、そちらのほうが覚えやすいと感じる方もいるかと思いますね。
しかし、10ホールズハーモニカは表現力と爆発力が抜群の楽器であり、10ホールズの和音でしか表現できない世界観もあると思います。
クロマチックハーモニカの場合、配列がドレミファソラシドのままでわかりやすく、楽器初心者にも入門しやすいと思います。ハーモニカには「クロマチック」「10ホールズ」「複音」などいろんな種類がありますが、これらは「ウクレレ」と「ギター」と「ベース」ぐらい違います。音が発生する原理は同じですが、配列、演奏感、役割などが全然違います。
同じハーモニカという名前がついているだけで同じものだと勘違いされたり、使い道が限定されたりするのはもったいないと思いました。ハーモニカの多様性と魅力をもっと広く知ってもらえるように、これからも頑張ります♪
はらよし:
始めにどのハーモニカ(楽器)を手にするかでその後が決まってくる、というのはありますね。メーカーとしてはどのハーモニカもそれにしか出せない世界があるので手にして欲しいのですが、現実は難しいですね。
10ホールのプレイヤーがクロマチックもプレイすることは多いですが、逆はほとんどないように思います。
楽器に対するイメージも重要で、10ホールだと『ブルースハープ』というホーナーさんの商品名が楽器名として一般化していますので、どうしてもブルースのイメージがあります。もっと多様な音楽で活躍しているのですけどね。
複音ハーモニカは高齢者が吹く楽器というイメージですが、これは戦前戦中に流行したこともあり、吹ける人が多いというのも関係しています。何より、ずっと吹いていなくても今でも吹けるというところが凄いと思います。それこそが複音ハーモニカの”探り吹き”の魅力です。クロマチックだとそうはいきませんが(笑)
トレモロの美しい音色は童謡や唱歌に合っていますし、何より日本で奏法が進化、確立していきましたので、後世に残したいですね。
紫吹:
そうですね。私も配信で「10ホールズ」と言っても伝わらないことが多く、「ブルースハープ」と言ってしまうことが多いです。
複音ハーモニカの探り吹きというのは、音階が物理的に等間隔だから、音感で音の差がわかれば、物理的にも同じぐらい移動すれば吹けるという意味でしょうか。
私は恥ずかしながら相対音感も持っていないため、楽譜を見ながら「この穴がこの音」という考え方が結構あっていたのかもしれません。
複音も10穴も一本で同じキーなので、どのように吹いても音がぶつかることがないところも素敵ですね。昔ながらの良い曲は、メロディがはっきりしていて、流れるように綺麗なものが多いから、複音ハーモニカの綺麗なトレモロとよく似合いますよね!
ここ10年の曲は臨時記号やおしゃれなコード進行が多く、複音ハーモニカではカバーしきれないことが多いです。そう考えると、他社製品のクロマチックトレモロも納得できますね。
はらよし:
探り吹き、というのは単純に、複音ハーモニカはスケール楽器なので、知っているメロディであれば探せば大体音が見つかる、という意味です。10ホールだと低音部が特殊な配列ですからね。ただご指摘のように、昨今の曲は臨時記号必須ですから1本で吹けないことが増えました。
ちなみに、弊社のクロマチックシングルはスライド式ではないS-50、No.1577バイオリンスケール(廃番品)を紫吹さんはお持ちと思いますが、ユニクロマチックやミューといったスライド式クロマチックハーモニカは吹かれたことがあるのでしょうか。
紫吹:
そうですね...メーカーの担当者さんに直接伝えるのは少し失礼かもしれませんが、試し吹きはしたことがあるものの、購入したことはありません。同じ価格帯だと、やはりSUZUKIさんやHOHNERさんのほうが選択肢が多く、なかなか第一選択肢から外されない気がします。
特に個人的にネックだと感じたのは、ユニクロマチックもミューも4オクターブモデルがなく、3オクターブモデルのみとなっている点です。私がクロマチックハーモニカに魅了された理由の一つは、このコンパクトな体から半音込みで4オクターブの音を出すことができることです。どこでも演奏できて、手軽に持ち歩けるのに、バイオリンやサックスよりも広い音域を持っています。
最近のJ-popやアニソンは音域が広いものが多く、低音域が使える4オクターブモデルのほうが相性が良いと感じます。もちろん、3オクターブモデルもよりコンパクトでより持ち運びやすく、早いフレーズの演奏に対応しやすいなどの魅力があり、私も3本ほどサブで所持しております。
なんとなくですが、ユニクロマチックはクラシック向きのイメージがあります。ミューのほうはショートクロスに非常に魅力を感じており、最近流行りの早口曲との相性が良さそうですね。実は購入するか悩んでおります。もし4オクターブモデルが製造されたら、真っ先に購入したいです。10ホールズならTOMBOのメジャーボーイ一択です(笑)。
はらよし:
率直なご意見ありがとうございます。
12穴のクロマチックハーモニカはCを基準とした3オクターブですから、キーが変われば必然的に低音と高音、どちらかが少なくなってしまいます。昨今の音域の広い歌メロなどを吹く場合、キーによって12穴では足りなくなることもあるでしょう。
4オクターブを必要とする楽曲が多いと、12穴は選択肢から外されてしまいますからね。
ただ、エレキギターやベースも弦の本数が通常より多いものがありますが、特定のジャンル、または楽曲に使用されているので一般的ではありません。
クロマチックハーモニカも12穴を基本に、楽器の使用目的の変化もあって音域が増えていったと思います。
つまり、その楽器で何を演奏(表現)したいのか、が重要なのかと思います。
弊社も時代の変遷による最新のニーズは理解しておりますので、新しいクロマチックハーモニカを発表する際には、その期待に応えられるようにと思っています。
また、ミューのショートクロス機構、10ホールのメジャーボーイについての見解もありがとうございます。
さて、メタバースという新たなプラットフォームでは演奏ライブなども行われているようです。
紫吹さんもイベントにたくさん参加されておりますが、楽器演奏系のVTuberとしてメタバースについて思うことをお聞かせください。
紫吹:
そうですね、
配信者としてだけではなく、音楽愛好家として、リアルでの集まりや演奏会の代わりにネット上で演奏会を開催するという意味で、メタバースの可能性は無限大です。
メタバースでは、誰でも簡単に舞台を用意でき、会場代もかからないので、より手軽に開催できます。手の込んだステージを有志で集まって作成するのもとても楽しいことです。
観客も移動不要で自宅から参加できるため、全国、全世界から集客ができます。

さらに、メタバースならではの表現もたくさんあります。会場の照明やエフェクトはもちろん人の視野・視界の色なども自由に制御できます。

マイク一本、パソコン一台、さらに言うとスマホ一台でもステージに立つことができます。(VR機材必要ありません!)
配信者やアーティストとしてだけでなく、音楽愛好家の皆さんにも気軽にメタバースに参加してほしいですね。
はらよし:
スマートフォンを所持することがデフォルトになったように、メタバースという無限の仮想空間の存在が当たり前のように認知されれば、さらに楽しみ方も拡大していきそうです。
音楽制作もかつては専用スタジオでしかできなかったことが、自宅で完パケまで制作できるようになりましたからね。
ところで、紫吹さんは実際にどんなスペックのPCや配信機材を使用されているのでしょうか?
可能な範囲で教えていただければと思います。
紫吹:
実は今使っているパソコンはメタバースの住民の方に組み立てていただいた、いわゆる自作PCです。予算は16万円ほどでした(笑)。このPCは私の活動を支える重要なツールで、ある程度動画編集ができ、3Dのソフトも起動することができ、また快適に配信を行うことができる最低ラインで揃えてもらいました。
配信機材についてですが、現在使用しているのはキーボードでもお馴染みのROLAND社が出しているブリッジキャストという配信向けデバイスです。これにステージでおなじみの指向型マイクSM58を接続しています。喋りとハーモニカの演奏は同じマイクで音を取っていますが、ハーモニカを演奏する際には、設定でワンボタンでリバーブをONにし、音量を少し下げるようにしています。
録音機材については別にMacBook Proを使用しており、ミキサーはヤマハのMGシリーズ、録音ソフトはLogic Pro、マイクはMXLのコンデンサーマイクを使用しています。
最初は録音用の機材で配信も行っていましたが、配信用のサウンドと録音用のサウンドには違いがあると感じ、分けて使用することにしました。
高額の機材はないですが、いまのところ快適に活動できております。参考になったら嬉しいです。
はらよし:
ありがとうございます。
機材沼にハマると切りがありませんが、快適に活動するために必要なものは揃えたいですよね。
配信とレコーディングで機材を分けることで、それぞれのシチュエーションに合わせることができ、結果的にリスナーの心へ届くことに繋がっていると思います。音楽系にとって、やはり音は大事ですからね。
さて、紫吹さんは現在、配信やコラボなど精力的に活動をされています。直近(2024年内)の目標と5年以内の展望をお聞かせください。
また、広義のVR世界に興味はあっても敷居が高いと思っている方に向けて、何かメッセージをいただければと思います。
紫吹:
まず、今年の目標についてですが、実は2024年の目標であったチャンネル登録者数10,000人をすでに達成いたしました!大きな目標はありませんが、日々少しずつでもハーモニカの魅力を知ってもらえるように活動を広げていけたらと思います。
一旦のサブ目標としては、毎月楽器演奏者とコラボ配信を行い、楽器愛好家にハーモニカを認知してほしいと思っています。これから実現したい内容としては、ハーモニカを取り扱っている楽器メーカーさんや店舗さんとのコラボが挙げられます。ハーモニカの既存ファンはどうしても年齢層が高い傾向にありますので、VTuberを含めたサブカルとのコラボを通じて、少しでも若年層へアプローチできたら嬉しいです。
食品系の案件はすでに経験しておりますが、やはり本命はハーモニカですね。バーチャルの世界ではいろんな活動の形があります。
VTuberとして動画配信をメインで活動している人、メタバース空間での非現実的な体験を趣味にしている人、リアル活動の延長としてメタバース空間のアバターを導入した人、様々な形があります。
VTuberといえば参入コストが高いと思われがちですが、メタバース空間の一員になるのはとても簡単です。アプリ一つで今日からでも始められます。
コロナ禍で演奏するコミュニティが減り、楽器を眠らせている方、顔出しでネット上のコミュニティに参加することに抵抗がある方、ぜひ一度覗いてみてください。ハーモニカの魅力を一緒に楽しみましょう♪
はらよし:
ありがとうございます。
既に目標を達成されたことは喜ばしいことです。
コラボも幅広いジャンルで実現していけるとよいですね。
最後に、バーチャルな世界に興味を持っている方が参考になるサイトやサービス、メタバースのプラットフォームなどありましたらご紹介いただけますでしょうか。
紫吹:
VTuberとして活動するにはいろいろと制約があり、特に楽器演奏はオーダーメイドが必要なのでいきなりは難しいかもしれません。
質問にあった「メタバース」のほうはすぐに始められると思います!
イベントでお世話になったメタバースの住民さんから聞いた話を元にいくつかのプラットフォームをご紹介しますね。
Clusterは、スマートフォンやPC、VR機器など様々な環境からアクセスできるメタバースプラットフォームです。日本のプラットフォームであり、サポートが良く、3Dモデルを持っているVTuberがよくイベントに参加しています。
VRChatは、世界最大級のメタバースプラットフォームです。PCやVR機器からのアクセスがメインですが、最近はスマホ対応や日本語化の動きもあるそうです。紫吹はあまり使ったことがありませんが、有名なプラットフォームです。私のハーモニカ(3D)を作ってくれた方もVRChatの住民でした。この方は趣味で獣人の姿でメタバース空間内でハーモニカを演奏していました。
紫吹のハーモニカ(3D)
Boothは、多くの3Dアバターが取引されているプラットフォームです。複数人が自由に使えるアバターも多く、クオリティーが高いものや種類が豊富で、必ずなりたい姿が見つかると思います。このサイトでVRM形式のファイルを購入し、上記のメタバースプラットフォームに入れば、あなたも今日からメタバースを体験できます!
はらよし:
ありがとうございます。まずは思っていたよりも始めやすいメタバースのプラットフォームに登録し、遊んでみるのもいいですね。
他にも掘り下げて聞きたいこともありますが、今回はこの辺りで終了させていただきます。
紫吹さんは『TOMBO祭2023』でもプレイヤーブースに出展いただき、またライブ配信においてトンボ村を隈なく散策してくださいました。
その配信を私もリアルタイムで拝見しておりましたが、配信ならではの双方向コミュニケーションを大事にしながら、ハーモニカの魅力をしっかりと伝えることができていたと思います。
オンラインで楽しめるサービスは今後も成長していくと思われます。
ハーモニカを使用したコンテンツが増えれば、楽器の認知度も上がってくると信じています。ハーモニカVTuberも10ホールや複音プレイヤーが出てくると盛り上がりそうですね。
紫吹さんにはこの世界のパイオニアとして、今後も大いに活躍していただきたいと思います。
この度はピックアッププレイヤーのインタビューにご協力いただきありがとうございました。
◆インタビューを終えて
かなりボリュームのあるインタビュー記事になりましたが、VTuberという存在とそれを可能にしていてるテクノロジーについて、そしてその中で結果を出すためのチャレンジなど、目から鱗のお話が盛りだくさんだったのではないでしょうか。
楽器の演奏に興味はあったけど自分には無理、そう思っていたところクロマチックハーモニカに出会い、自分でも出来ると思わせてくれた、そう紫吹さんは語ってくれました。
その経験から、クロマチックハーモニカという存在を多くの人に知ってほしい、と活動を始め、フォロワーが1万人を超えてもその想いを大切にされているのが印象的でした。
インターネットメディアは日々進化し、可能性が広がっています。
そして様々な表現のスタイルが生まれています。
リアルとバーチャルの比較はあまり意味がないのかもしれません。
どちらの利点も最大限に活かすことで、もっと新しい世界が見えてくると思います。
ハーモニカを片手に、そんなテクノロジーの最前線で常に活躍している紫吹さんの姿を容易に想像することができます。
活動の目的を明確にし、目標を立てて行動に移し、継続することで切り開けることがある、そんな希望を感じさせてくれました。