株式会社トンボ楽器製作所
長井 × はらよし 座談会
Part2
はらよし:
TOMBO祭アワードでグランプリを獲得するための方法、があるとしたらやはりある程度の作品数が必要になると思います。
ボーナスポイントで大きいのはコンプリート関係です。
そして作品以外ではライブ配信やリアルイベント出演というのがあります。
次回もこのフェスバリュー制は継続しますが、配分については検討する予定です。
では次に参りましょう。
アメイジングパフォーマンス賞、これが実質作品としての最高峰と言ってもよい賞です。
「10秒間で鷲づかみ!杯」が単独開催していたときの『ベストパフォーマンス賞』に該当します。
ハーモニカ、アコーディオン別ではなく、TOMBO祭アワードとして一つだけの賞なので受賞するのはかなり難しいですね。
記念すべき第1回目の受賞者は、まだ学生でありながらその作曲レベルと演奏技術で圧倒的な存在感を放った江島和奏さんでした。
どのような点が評価されたのかお聞かせください。
長井:
「10秒間で鷲づかみ!杯」では過去にオリジナルのプレイもあったんですけど10秒間っていう枠がありましたので...我々が聴けるのは前後含めて30秒程度でした。
やっぱり、ハーモニカもアコーディオンもインストに限らず楽器が使用されたオリジナル曲がどんどん世に出ていったら良いなぁって常々思っているので、今回はオリジナル曲のミッションを私としては期待していました。そこへブルースあり、歌ものあり、インストありで様々なエントリーが来たのは嬉しかったですね。
「待ってました!オリジナル曲!」ってガッツリ聴かせていただきました。
そしたら江島和奏さんの二曲が想像を超えてきたんです。
私は評論家でもなんでもありませんので一個人として、なんというか風景、世界観を感じちゃったというか。
個人的には「音は続く」の三拍子と独特な風景が広がっていく感じが好きで一票!でしたが、審査員総合では同じ和奏さんの「曲がった笛」が「アメイジングパフォーマンス賞」に選ばれました。
こちらはエキゾチックな雰囲気が素敵ですよね。
はらよし:
ありがとうございます。
今後が楽しみな若手ですね。
では次に、受賞数ナンバー1となったWASUKEさんのワンマンバンド作品『残酷な天使のテーゼ:4つの楽器を1人で同時に演奏してみた』を見ていきましょう。
受賞したのは『YouTube最多評価賞』『審査員特別賞』『フロンティア賞』の3つとなります。
WASUKEさんには紫吹まゆさんと同じく、今回『トンボ楽器製作所』エリアでインタビュー記事にご協力いただきました。
1人で多数の楽器を奏でる“ワンマンバンド”を結成し、そのレベル向上に勤しんでいました。
そしてその分野を開拓した者として与えられる念願の『フロンティア賞』を今回獲得されました。
どの辺りが評価されたのでしょうか?
長井:
インタビュー記事にもありますが、ハーモニカだけではなく他の楽器も取り⼊れた演奏で毎回参加していただいているWASUKEさん。
ワンマンバンドなんですけど編成が面白いですよね。このスタイルを継続されていること、そして個人的には、活動休止中だった右足くん(ハイハット)を今回復活させていただけたことでしょうか(笑)。
特別審査員の田ノ岡さんのコメントにもあるようにそれぞれのパートがしっかり演奏されているのもポイントだと思います。
『フロンティア賞』は初の選出かと思いますので、今後もWASUKEさんのようにTOMBO祭の中で何かの分野を開拓される方がエントリーされることを願っています。
はらよし:
楽器の新たな楽しみ方を開拓し一定のレベルに到達する、それがフロンティア賞の基準として、WASUKEさんの地道な努力と継続の物語が参考になればと思います。
次はナイスアイデア賞ですが、この賞はこんな使い方も出来るんだ、という発見と驚きを与えてくれた作品が対象になります。
そして動画という媒体をどのように使うか、というのも重要です。思わずニヤっとしてしまうところは「10秒間で鷲づかみ!杯」とも通じるところがあります。鷲づかみ杯の長尺版とも言えそうですが、長井さんとしてはどの作品が印象的でしたか?
私的にはGoatManさんの『これが本当のトレインバンプ? その73秩父鉄道SLパレオエクスプレスVamp』です。
この方はX(旧Twitter)でも色々な鉄道を紹介しながらブカブカとバンプしていて、楽しく拝見していました。
その中から選んだのがSL、やはりインパクトありますね。
長井:
私的にはColly Yuasaさんの八木節です。一体感が堪らない!
はらよし:
八木節、本場の祭りということもあって、やはりグルーブ感が違いましたね。
次は作品の少なかったカテゴリーについて触れたいと思います。
まず文芸系ですが、エントリー数は5つでした。やはり皆さん、もうブログは書かないんでしょうか(笑)。
一つはSNSの投稿でしたので、媒体としては文章が書けるものであればOKなんですが、それはそれで曖昧すぎるかもしれません。
そして労力の割にフェスバリューが低い、というのもあるかもしれません。
拡散力として動画コンテンツを重視しているのはご理解いただけると思いますが、お祭りとして考えると、たこ焼き屋さんやお好み焼き屋さんだらけでも困ってしまいますからね。
ここは要検討で、次回はエントリーしたいと思えるミッションやフェスバリューの配分を考えたいと思っています。
そんな中でもグランプリの缶がえるさんは楽しい記事を投稿くださいました。
伝えたいことを文字にするというのも、いいものだと思います。
そしてフォト系も少なかったですね。これは意外でした。
前回は『楽器のある風景』として単独コンテストとして開催した時より減ってしまいました。
皆さん気軽にSNSにアップしているので、もっと集まるかと思ったのですが……
やはりインスタグラムのリンクを送る、という作業が手間なのかもしれません。
ダイレクトに写真を送れるようにすれば増えるでしょうか?
ただ、そうすると多くの人に届ける、という意味ではSNS投稿にかないません。
どうするのがいいですかね……
長井:
本来エントリーが一番しやすいカテゴリーだと思うんですが、
カテゴリーとミッションが多いので、さっと来て投下って訳にはいかなくなってる可能性もあるかもしれません。
現在Instagramもハッシュタグでは投稿全てを把握できない仕組みになってきているので、弊社がコンテスト用のインスタアカウントを作成して@tombo_~~~(アカウント名)を共同投稿者としてタグ付けしてアップしていただければ投稿者とトンボ側の両方のホームで表示されるので拡散力もより上がるかもしれませんね。
フォトコンは別で考えるのもありかなとも思ったり...
はらよし:
SNSのアルゴリズムも日々変化していますので、以前と同じように出来ないこともありますから大変です。このフォト系の投稿率アップも課題として持ち越しですね。
あと、やはり一番気になったのは『複音ハーモニカ』のコンテンツが一つもなかったことでしょう。
トンボ楽器の複音ハーモニカは愛用者も多く、確固たる評価をいただいている製品なのにどうしてなのか、と思う方もいるでしょうが、一つはオンラインイベントというのがあるでしょう。
複音ハーモニカの愛好者は高齢の方が多いですが、YouTube動画やWebサイトの視聴はできる、という方も多くいらっしゃいます。
しかしオンラインイベントへの参加となると、ハードルが高いと感じているかもしれません。
トンボとしては自慢の複音ハーモニカが活躍するコンテンツが増えて欲しいと思っています。
そして若者にも複音ハーモニカの素晴らしさを知っていただきたいですよね!
長井:
ここは難しい課題ですよね。
確かに複音ハーモニカユーザーの年齢層は年々上がっていますがリアルなコンテストではキッズ層もミドル層もいらっしゃいます。
ただコンテストで独奏の複音ハーモニカの魅力を引き出すにはそれなりの技量も必要なので、TOMBO祭のオンラインコンテストは少しライトなミッションを全面に押し出しても良いのかもしれませんね。
複音を含めたデュオやアンサンブル、他の楽器とのコラボなど、メンバーに他のスタイルの方がいれば分母が増えるかもしれません。
ウチのスタッフで複音ハーモニカのプレイヤーでもある正井くんはどう考えますか?
正井:
複音ハーモニカは他のハーモニカ同様に魅力的な楽器だと思いますし、増えてくれたら嬉しいなと思います。
たとえば10ホールや、クロマチックのプレイヤーさんでも、曲の中のワンポイントで複音ハーモニカに持ち替えて使うと効果的な場面もあると思います。
きっと使い方次第で様々な可能性があると思います。
このコンテストを通じて、新しい複音ハーモニカの使い方を考えるのも楽しいと思いますし、今後新たな可能性が見えてくるかもしれないなと思うと、個人的には楽しみです。
できれば複音ハーモニカのプレイヤーさんにもたくさん参加していただきたいです。
私も、もっと複音ハーモニカの魅力を伝えられるように頑張らないととも思いました。
はらよし:
複音ハーモニカのコンテンツを増やす、これも次回の課題です。
さて、そんな様々なコンテンツがTOMBO祭にはありますが、中でも動画だけを集めた『動画博物館』というエリアがあります。
今回は公式アーティストブースで埋め込まれた動画も加わり、またTOMBO祭アワードによって動画作品も増えたのでかなりボリュームがあったと思います。
動画はYouTube以外にSNS内でも気軽に投稿できるようになり、誰でも観れて誰でも投稿できるメディアになった、といっても過言ではないですよね。何かを伝える手段として、動画は今後も重要であると思います。
細かいことはいいから、とりあえず動画コンテンツを観たい、という方も楽しめるようにこのエリアがあります。
楽器ですから音もあってヴィジュアルもある、というのはやはり楽器の魅力を伝えるメディアとしてはベストですよね。
では最後に、いただいたアンケートを元にお話ししたいと思います。
アンケート結果を見ると、今回のTOMBO祭は概ね好評をいただけたようですが、まだまだ見直す必要がある、と思わせてくれたご意見も頂戴いたしました。
ここまでのお話しの中で触れたこともありますが、改めて課題をピックアップしたいと思います。
まず、サイトの構成についてですが、コンテンツが増えたり、TOMBO祭アワードのシステムが複雑だったこともあり、階層が深くなったり情報が散漫になったところがやはりあったと思います。
「参加してみたいと思ってたけどその前に挫折した」というご意見もあるように、情報を整理し目的に辿り着く行程を見直す必要があると感じました。
また、コンテンツが分散化しているというご意見も確かにそうだなと思いました。
これは統合して組み込んだ方が分かりやすいしすっきりするコンテンツがあると思います。
このようなサイトの作りに関しては、整理し分かりやすくしたいと思います。
続いて、アコーディオン作品のエントリーが少なくて残念というご意見。
ごもっともです。
その一つに賞品のラインナップもあるかと思っています。
ハーモニカと違って楽器をプレゼントすることは出来ず、かといってアクセサリーもそれほど消耗するものではありません。
メンテナンスサービスといっても弊社取扱い製品に限るので、中々難しいところです。
が、これは何か考えます!
SNSを見る限りアコーディオン奏者の動画投稿はたくさんありますし、参加したい、と思わせることができれば参加してくれる……はずですよね、長井さん!
長井:
そうですね。
冒頭でも触れましたが、個人的には祭のサイト構成をできるだけシンプルに。これを機にコンテンツ名や導線設計なども課題にして検討したいですね。
サイトの閲覧数は素晴らしく伸びていますので、潜在的な参加ニーズはあると思っています。
次回はもっと参加していただけるようなTOMBO祭を目指しましょう。
はらよし:
はい。
他にはフェスバリュー(FV)の配分についてのご意見もありました。
手間暇かかる作品には多めにしたい、という思いはありますが、中々難しいところがあります。
量が多くても内容が伴わないフェスバリュー獲得のためのエントリーが出てくることは避けたいです。
幸い、今回はそういったことはなく皆さんの良心に助けられましたが、このTOMBO祭アワードがたくさんの人に広がり、参加者が増えればマイナスな部分も出てくるかもしれません。
かといって質と量を判断してFV決めるわけにはいきません。
ただ、ミッションによって異なるFVはあってもいいと思います。
さて、いろいろと振り返りをしてきましたが、次回は今回良かったところを伸ばしつつ、いただいたご意見を元に改善を行い、より多くの音楽好きの方に楽しんでいただけるイベントを目指したいと思います。
長井さんの方で何かあればお聞かせください。
長井:
そうですね。
今後のTOMBO祭は更に参加者の幅を広げられるよう、様々な音楽シーンでこの楽器の可能性を表現してもらえる場として、そしてできるだけ幅広い層に気軽に楽しんでいただけるような環境づくり。
それを目標に課題をクリアしていきたいですね。
回を重ね、オリジナル曲、バンド系、歌もの、VR系など参加者の幅は広くなっているのは確かです。
今後もこのTOMBO祭を温かく見守っていただけましたら幸いです。
はらよし:
ありがとうございます。
それではTOMBO祭2025、情報公開までお待ちください!
