株式会社トンボ楽器製作所

ハーモニカは電子楽器ではありませんので、使用していると音が出なくなったり、音程がずれてきたりします。
有償の修理に出せば当然、綺麗になって戻ってきますが、症状によってはご自身で治すことが可能です。
ここでは、ハーモニカの基本的な構造と比較的簡単なメンテナンスについて説明いたします。
ハーモニカの構造
ハーモニカには様々な種類があり、音の配列も異なることは、『ハーモニカの種類』で説明していますが、音が鳴る原理は同じです。
ハーモニカはリードと呼ばれる薄い金属片が振動することで音が出ます。リードを振動させるために空気の流れを作りますが、それが吹き吸いという動作になります。
下図は複音ハーモニカを例にしていますが、使用する部品の種類は他のハーモニカでも大きく変わりません。
カバー、リードプレート、本体(コーム)というシンプルな部品構成です。

リードプレートには各音のリードが所狭しと配置されています。
このリードとリードプレートに空いている窓の間は約0.03mmですので、髪の毛のようは細いものでも挟まってしまうと発音に影響が出てしまいます。
音が鳴らなくなる理由で最も多いのが、何らかの異物がこの隙間に挟まってしまうことです。

次にリードを横から見てみましょう。
リードは並行ではなく、先端が少し反っていますね。
それにより空気が通り、リードが振動して音が出るようになります。
この反り具合、あるいは先端の開き具合をアゲミ(上見)と呼んでいます。
アゲミが全くなければ音は出ませんし、低いと詰まりやすくなり、高いと空気の量が多く必要になります。
工場出荷時の設定はリードの厚さと同じにしています。

セルフメンテナンス
以上の構造を踏まえ、自分でも可能な修理がいくつかございますのでご紹介いたします。
①異物の除去
ハーモニカのカバーは両サイドのネジを外すことで外すことができます。
密閉率を高くするためカバーは弓なりに沿っていますので、ネジが飛ばないようしっかり押さえながら外してください。
カバーを外すと、リードプレートがありますので、音が出ない箇所を調べてください。
リードを弾いて”ピン”と音が出なければ、何かが挟まっているか、アゲミが適切でないか、リードがずれているか、など理由が判明すると思います。
異物が挟まって入れば、先の鋭利な工具などで取り除いてください。
唾液の成分が固まって剥がれたものも挟まることがございます。
弊社では『ケンとヘラ』という工具を販売しています。片方がケン、もう片方がヘラになっており、異物の除去やアゲミの調整などに使用されています。

②アゲミの調整
アゲミはリードを押すことで調整することができます。
始めは力の加減が分からないと思いますので、不要となったハーモニカや修理に出す予定のハーモニカなどを利用し、感覚を掴む練習をするとよいでしょう。
リードの根本から1/3くらいの箇所を押して調整してください。
③清掃
ハーモニカを綺麗に保ちたい、とは多くのユーザーが感じており、掃除方法のお問合せもよくいただきます。ご自身でもできる清掃方法をご紹介します。
まず、ハーモニカのカバーに付着した汚れに関しては、毛羽立ちしない布などで拭きとってください。この際、ハーモニカクリーナーがあるとスムーズに汚れが取れるでしょう。
次に、水洗いに関してですが、本体の素材が木製の場合は本体膨張の原因になりますのでお控え下さい。樹脂製であれば可能ですが、注意すべき点がございます。水道から勢いよく流水を吹き口に入れてしまうと、中のリードに変化を与える可能性があります。
水洗いをする場合は、ぬるま湯に20分ほどハーモニカごと浸し、浮いてくる汚れを、ハーモニカを動かして落としてください。最後に軽く流水で流し、水気を振って落とした後、吹き口を下にして陰干ししてください。
カバーやリードプレートを外して清掃する場合は、リードがずれたり折れないよう注意してください。

④リードプレートの交換
調律済みリードプレートは部品として販売していますが、プレートを装着後にアゲミの調整は必要となります。
また、厳密にはカバーを被せた後に吹き、微調整が必要な場合がございます。
そのため、リードプレートの交換はご自身でアゲミと簡単な調律が出来る方は、選択肢として入れてもよいでしょう。
ハーモニカの部品価格はこちらを参照ください。
⑤調律
音程がずれてきたら調律が必要です。しかし、調律は難易度が高いので、通常は修理に出されるのがよいかと思います。
ご自身でチャレンジしたい、という方は、弊社のYouTubeチャンネルにてメンテナンス講座の動画がありますので、ご参照ください。
ここでは音程がずれる原因と調律の原理について解説いたします。
リードは金属疲労によって振動数が落ちてきます。そのため、音は必ず下がってきます。
元の音に戻すにはリードの振動数を修正する必要があります。それはリードを削ることで可能となります。
また、削る場所によって変化が異なります。音を上げたい場合は先端部分を削り、下げるには根本付近を削ります。
リードを削るとリード自体の耐久性が落ちますので、調律できる限界はございます。
リードを削るための道具は、No.6011という工具セットに入っていますので、興味のある方は動画を参考にチャレンジしてみてください。